「IEO」と呼ぶ暗号資産(仮想通貨)を通じた資金調達手法が広がってきた。仮想通貨交換業者が審査に責任を持ち、発行体が勝手に資金調達して詐欺の温床になったICO(イニシャル・コイン・オファリング)との違いに特徴がある。累計調達額は世界で700億円を超え、日本でも7月に初案件が登場した。

IEOはイニシャル・エクスチェンジ・オファリングの略で、仮想通貨を使った資金調達を指す。ICOでは発行体自身が不特定多数の投資家に直接、トークンや仮想通貨を販売・配布したのに対し、IEOでは仮想通貨交換業者が金融当局と折衝しながら数カ月~1年かけて審査する。発行体が資金を手に入れて逃げる詐欺行為を排除するのが狙いだ。

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日本ではブロックチェーン(分散型台帳)開発をてがけるハッシュポート(東京・文京)とマンガアプリ運営のLink-Uが共同出資するハッシュパレット(東京・港)がIEOの1号となった。大手仮想通貨交換業コインチェック(東京・渋谷)を通じて1~15日に募集し6万4000人超から227億円を集めた。倍率は24.4倍で、抽選の上配分する。

IEOの特徴のひとつが調達した企業がトークンを通じた独自経済圏の構築が可能になる点だ。例えば、ハッシュパレットが販売した「パレット・トークン」の場合、偽造・改ざんできない、鑑定書付のデジタルデータと言われるノン・ファンジブル・トークン(NFT)の支払いに充てられるほか、保有割合に応じてブロックチェーンの運営に参加することができる。

コインチェックの試算では世界の累計調達額は700億円に達する。有名なIEOが「ポリゴン」だ。イーサリアムの送金手数料の高騰問題に対処するために始まった開発プロジェクトで、19年にIEOで6億円を調達した。NFTサービスの支払い通貨などに採用されている。

今後IEOが拡大するには課題もある。その一つがバイナンス問題だ。同社は無国籍でIEOを推進するが、米証券取引委員会(SEC)は「登録されていないオンライン取引プラットフォームが自らを取引所と称して不適切な取引をおこなっている」と警告する。IEOがICOの汚名を返上して新たな資金調達手法として定着するには、規制当局との協調が重要になりそうだ。